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2012-04-09-Mon-23:22

Green Bird 

北風に 凛と いどむように
木は梢に 緑の炎を 点します
からだのどこよりも か細い先端をさらして
寒さできしむ夜長に ふるふる震えています

それでも炎は 根にそして土に繋がって
大地の胎動に 耳を立てています
やがて炎は 空いっぱいに爆ぜて
はる という序曲に 深々とした薫りを飛ばします

枝先で息をひそめている Green birdよ
たよりなく尖った声のまま 唄ってごらん
君のさえずりは 君がかつて割って出た 卵の殻にも谺して

若葉のような翼広げて 羽ばたいていけるでしょう
燃えさかる森から ウッドベース響かせて生まれる 
コーラスの 火の粉はじける銀河のさなかを





(Seasons-plus-2012年春号 掲載作品)
2012-02-29-Wed-23:39

幾千万の結べない便りを

Dear ×××

今朝
わたしの町では
初雪が降りました。
あなたの街では
どうだったでしょうか?

粉雪が頭上から
囁きかけていたので
わたしは凍える頬をさらして
湯気のような声を立てようとしました。
そのとたん
口に含んでいた薄荷のドロップが
寒がりな真珠に思えてならなくて
くちびるを深海の貝のように閉ざしました。
うっかり噛まないように
大事に、大事に、温めていったら
すっ、と
しずかなかおりが
濡れた舌で透きとおっていきました。
あなたに伝えたくても伝えきれない言葉が
あかるいさみしさをもって
気化していきました。



「アメは噛んじゃだめ!」
って、あなたに叱られた頃が、懐かしい。
ねぇ、あの頃は何で
小さなことでも子どもみたいに
ポンポン感情をぶつけることが出来たんだろね。
わたしもせっかちだけど
あなたも相当せっかちで
イミテーションな果実が
口で溶けるのも待てないくらい
景色が目まぐるしく流れていったね。
そうだよ、あなただって叱っているそばから
ガリ……って
気まずい音を立てていた。
そんな些細なことも
聴き止めてしまうくらい
いつも呼吸を重ねていたんだね。
夏の陽射しきらめく
エメラルドの下り坂を
心が加速するままに駆けていた。



ねえ。
お互いが
それぞれの現実を
歩くようになってからも
あなたが背負っている
空の重みを たゆみなく思っている。
同じ天気の下で
笑い転げることが 叶わなくなっても
同じ大地の上で
ときわ木のような 声援を送っている。
あなたに語りかけるときは いつも
結ぶことができない便りのように
いつまでも
いつまでも
言葉を散りばめてしまって
いつのまにか
吹雪となってこの身をうずめてしまうけど
ゆきも、いつかはかろやかにとけるでしょう。
あなたも、
わたしも、
いつかは空そのものになってしまうでしょう。
だから、ねえ。
心でつむぐ便りが
あなたに結ばれないまま
つぎつぎ消えてしまっているようにみえても
大丈夫。
あなたも、
わたしも、
もとからたったひとりだった。
この世にひとりしかいない
わたしと、
一瞬を共にしてくれて
ほんとうにありがとう。



わたしは爪の先まで
子どもだったから
ドロップの缶には必ず
雪のような苦さを
戻していたけど

最後に残した孤独を
味わえるようになったら
あとはもう
どんな氷まじりの風からも
解き放たれるかもしれないと
まっ白になった道で
初めて思い当たりました

それにしても今夜は
芯から冷えますね
風邪ひいてませんか?
ちゃんと眠れてますか?
わたしは
真冬の底で
マリンスノーのような
静寂に打たれながら
小止みなく
心を
つむぎつづけています

幾千万の結べない便りを
たったひとりの
あなたに


2012-02-29-Wed-23:25

あの夜がある場所

あの夜
時の透間に
椅子のようなものを
見つけて
ふたり 並んで腰かけて

目の前で
湖となって静まった闇に
それぞれ
眸を向けながら
ふたり 寄り添って

ほつり、ほつり と
君がまるくなった心を
くちびるから解き放つのを
私は掌のくぼみで
受け止めて

 心そのものに
 ただ、心そのものになって
 君を 聴き止めてしまったから

夜が明けて
時がその緞帳を
白々と閉めきって
あの椅子がある場所に
二度と戻れなくても

そもそも
ひとつの椅子で
共に座っていたのか
ふたつの椅子で
別々に分けられていたのか

それよりも
どうしてあの透間に
至ることができたのか
頭に靄がかかって
思い出せなくても

 心そのものに
 ただ、心そのものになって
 君と 波紋を起こしてしまったから

戻れないのは
あの夜
あの場所
じゃなくて
これまでの自分でしょう

私はこれから
君の無言の仕草にも
葦のようなアンテナを
震わせずにはいられないでしょう

都会の雑踏
直線的な谷間
鉛のような現実

君がスニーカーの紐を
きつく結び直し
灰色の道を
小突くように蹴って
私に冷たい背中を向けても

その裏で
言葉になるのを拒んでいる
無垢で純な
感情を
自分のもののように
感じずにはいられないから

 心そのものに
 ただ、心そのものになって
 君と 余韻を残してしまったから

君の肩越しに広がる
デコボコな青空も
満天を濡らす
光の雨のような
星くずを隠しています

あの夜の
流れ星が零れるほどの
一瞬、
君の心は
たしかに私の心でした


2011-12-15-Thu-23:45

ブラッドオレンジ

かなしみにも
色があるのでしょうか。
空のように
日ごと、いや、秒ごとに
色を変えていくのでしょうか。
そうしたら
今、この瞬間は
夕焼けのブラッドオレンジです。
どうしようもなく澄み切って
大地の血管まで透けてみえそうなのに
ふるさとだけが見えません。



わたしのふるさとは川です。
それは、あなたとわたしを大きく分かつ川でした。
古い橋の入口には、有刺鉄線が野茨のように絡みついて
いて、ペンキの剥げかかった看板には、黒い文字で
「立入禁止」
と書かれていました。
それでも空は、眼差しが届かない先まで広がっていて、
声にならなかった吐息の向こうで、鳥の群れがいつかの
約束のように行き交っていました。

熟れた果実が
木陰を揺らして
根本に落ちるように
帰りたい
と、何度願ったことでしょう。

轟音。そして、真っ暗な陽射しが乱打する川面に、二対
の塔とミサイルのような翼が、煙を立てて崩壊するのが
映って、世界がかかとの下で砕け散っていくのが聴こえ
ました。
(ツギニブチヌカレルノハ、ヒトダ)
わたしは瞳に焼き付いてしまった影を振り払うように、
河原の帰化植物がざわざわ高鳴るなかを逃げていきまし
た。

ふるさとは、離れてしまったから帰れないのではありま
せん。
ふるさとは、欠片となってこの背中に突き刺さっていま
す。
手が届かないほど、生温かい暗部に埋もれて、どくどく、
どくどくと、凍えるような熱を流して、そして、



今も体内のどこか遠い処で、ふるさとの川が赤々と流れ
ています。
日向色に実ることなく、風にもぎとられてしまった魂た
ちが、これ以上何も失えない空で苦い飛沫を散らして、
取り返しもつかないほど暮れていきます。

(帰りたい)

朝靄にうなじをくすぐられながら、足音を鳴らしてあの
橋を渡る日へ。
あなたとめぐり逢う、その日へ。
わたしたち、瞬きの色も違っていて、どこまでも分かた
れてしまうかもしれないけれど。
違う、ということを赦されたまま、いつか同じ土の下へ
帰っていけるなら。
祈りをこめて、草舟を放つ。
大いなる時よ――夜明けの方に流れているのなら、どう
か。


2011-11-05-Sat-00:00

秋桜

赤い夕焼けを
薬指で すくって
唇に紅をさしましょう

これ以上
彩らなくても
胸の内から華やいで

あなたの名を
口に灯しただけで
微熱が伝わってしまいそう

変ね

あなたの前では
つぼみのような少女に戻って
銀河のはじまりまで
手をつないでいきたくなります

ふたりを抱く
あかね空も はなの海も
歩くそばから
散り果てようとしているのに





(Seasons-plus-2011年秋号 掲載作品)
2011-11-05-Sat-00:00

青林檎

君の望みが
生まれながらに青いまま
実を結びますように

都会中の
匂いを消された樹々が
冷ややかに燃えて
やがて世界が
無色の灰を散らしたとしても

君は芯に
海を血しぶかせたまま
アスファルトの
混乱した道を
まっすぐ駆けていけますように

 空が、高みに逃げていく
 木枯らしが、鋭く研がれていく

 君は喉に
 切っ先を、突きつけられても
 足元の星をあきらめたくないと、うたう

君の望みが
永遠につづくように青いまま
実を結びますように

完熟しない色も
いとしく歪なところも
そのままに

熱く
透きとっていく
吐息の果てにある
大海原に
還っていけますように





(Seasons-plus-2011年秋号 掲載作品)
2011-08-18-Thu-23:55

Moon Child

みぎめは
ひだりめを
見たことないまま
自転車のように
視線をすべらせようとします

ひだりみみは
みぎみみに
触れたことないまま
底無しの
らせん階段を造ろうとします

わたしは
メヴィウスの環の中で
永遠にわたしに
めぐり会えないから
新月の晩に
身を切るように
わたしの片割れを産みました

 わたしが、光で
   あなたが、影で

喃語から物語を
ふくらませるように
あなたは
地球を踏みしめたばかりの
柔らかなかかとで
宇宙から流れる風を
耕していきます

ころがして間もない
半熟のことばが
小石につまずくと
あなたは
癇癪を起こして
わたしの腕の中で
むずかります

でも
半欠けの種も
うねりにうねって
やがては迷路をはらんだ
森になります

草木は
雷雨のような
種を降らせては
いのちが秘める可能性に
驚きを隠せません

ねえ、いつか
満月の口に
わたしが飲みこまれて
暗闇に惑ってしまったら
今度はあなたが
わたしを産みおとしてくれますか?

時々
泣きじゃくっては
あなたを
困らせるかもかもしれないけど
あなたを
千夜一夜の言の葉で
包めるくらい
もっと
もっと
奥深いヒトに
なれたらいいのに

 あなたが、光で
   わたしが、影で

月は
照らされていないと
満ち欠けることもできません


2011-08-04-Thu-19:32

夕げの風

夏なのに
枯葉になりそうな手に
ハンドクリームをぬります

野菜と洗剤の匂いが残る
人さし指に
クリームの真珠を灯して

手を重ね
円を描き合って
若葉のつやを甦らせます

お母さん

わたしもこうして
数珠つなぎの
優しさに
育まれてきたのでしょうか

夕げの風が
想い出の庭に
さざ波を立てて

藍色の木漏れ日が
まるで天の川のようです





(Seasons-plus-2011年夏号 掲載作品)

2011-06-11-Sat-11:03

えらぶんちゅ

大きなガジュマルの蔭で
そばかすの散った
ちいさな腕を
蝶のように広げて

千々にきらめく
言葉のさざ波に
貝殻の耳を澄ます
えらぶんちゅよ

黒い瞳は
星空がほろりと
零れそうなほど
深く

陽に焼けた
おかっぱの髪では
汗と潮の匂いが
蒸せている

唄うたう
 野の声も
唄になれなかった
 息も
唄にならなかった
 風も
お前の産毛を
選んで
さわさわと
撫でてゆくでしょう

ここは
沖永良部島

琉球でも
薩摩でも
ましてや
亜米利加でもなく

珊瑚礁の
ここにしか
咲かない
華々が
満ちあふれる島

どんな道を
選んでも
魂が
還ってゆくでしょう

白百合が
雑草のように
凛と繁る
土へ

エメラルドグリンの
光が透ける
遥かな
海へ

お前の足音が
この地を
遠く離れて
空を鳴らす日が
めぐりめぐっても

魂は
 日輪に
  羽ばたいて

お前が
生まれたのを
とこしえに祝う
ふるさとへ
還ってゆくでしょう


2011-05-23-Mon-21:57

水と炎

水になりたい

あなたがわたしに
剣を振りかざしても
微塵にされることなく
その切っ先を
静めるように濡らすような
霧雨になりたい

炎になりたい

あなたがわたしに
銃を放っても
血を流すことなく
その弾丸だけを
鷲づかみして燃やすような
燈火になりたい

剣だって
いてつく水から
銃だって
とろける炎から
生まれてきたんだよって
あなたは
世界をあきらめたように
笑うけれど

棘立ちそうな
あなたの背中に
二の腕を回して
無言で抱きしめるような
平和
そのものに
わたしはなりたい


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