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2006-07-15-Sat-20:51

後朝―きぬぎぬ―

あなたが、水かさを増す

「では、また 」
と 言って
あなたが身を反らして
木立から、わたしから
離れていった
その刹那から

あなたが、視界でいっぱいになる

あなたが、
夜露で濡れる
河原を踏み分け
橋を越え
向こう岸へ、東の果てへ
行ってしまった

あなたが、

あし、ひざ、こし、はら、と
みるみるせり上がって
むね、の辺りで
水面に映る
め、に
め、を
つらぬかれて

わたしは、

盲目になる
みずからの め、で
みずからの め、は
見られないように
あなたを透かしてみる世界は
あなたの姿だけが瞳の奥に
消えて


(底無シノ川ニ、
(二人シテ堕チテイケレバヨカッタノニ



からだを薄衣のように
包むのは
雄の匂い

契りの名残は
空蝉の羽より
脆く

けたたましいなき声が
わだつみの木漏れ日に
響いて

帰れない空から、夜が明ける――
2006-07-08-Sat-11:38

七夕の雨

あなたとわたしの間を銀河は
天地を結ぶように流れている
まるで止まない雨のように

ふたりを分かつ早瀬は
つま先だけに在るのではないと
全身全霊に囁きかけるように

天地が哀しいほどに
結ばれている代わりに
ふたりの足取りは交わりを知らない

側にいても
すれ違いを繰り返す
平行線の深さだけが引力となって

止まない雨がないのは
約束事か無常か
いつかは透き通る今宵への問いかけ
2006-07-08-Sat-11:35

1+1=1

彼女は
僕の気持ちが
オンリーワンであることを求めながら
僕を数字に換算したがる
身長だったり
メールの回数だったり
おごりのメシの値段だったり
その影に隠している年収さえも
うるむ瞳で見通そうとするもんだから
背筋の裏に冷や汗が走る
天秤にかけて計っているんだろう
他の奴となのか
自分の中の理想となのか
比較対象は謎に包まれたまま
ふくよかな胸で揺らぐ天秤を
ぐらぐらに誤魔化したい衝動に駆られて
カラダをすっと引き寄せて抱き締める
すると
アスファルトの上で
ヒールの靴でバランスを壊して
彼女の温もりが雪崩れかかってくる
普通という名の薄氷の上で
普通という形を保ち続けようとしている心は
確かでないものを確かめようと
可笑しくも哀しい計算を繰り返してしまうんだろう
ふつうなんてもんじゃないほど、すてきだよ
もの言いたげに開かれた唇も
細い鎖骨のくぼみさえも
惑うほどに悩ましく
どんな数からも零れてしまいそうな不思議が
この腕の中にひとつだけある不思議
あたたかな息と息をかさね
1+1=1
を、こころみてみる
2006-06-15-Thu-20:01

なにもないうた。

「えくぼ」

六月の風にゆれる
さくらの葉っぱ。
よく見たら
ぽつぽつ 穴があいている。
虫に食べられてしまったのだろうか?

穴は どこかの虫の命を みたして
穴は みずみずしい空に みたされ

わたしのこころの
ちいさなえくぼにも
すずしい光を そそいでいる。



「オカリナ」

オカリナは、ね。

目にみえる
ゆびでふれられる
鳥のかたちをした土だけが
ほんとうではなくて、

目にみえない
土につつまれた
ほっこりした空っぽこそ
たましいなのかもしれない。

空っぽで
なかったら
息はとおらない。

空っぽが
なかったら
うたは羽ばたかない。



「おかあさん」

わたしの宝箱には
何もないと言って
涙こぼしたときも、

あなたこそ宝だと
掌の玉のように
いとおしんでくれた、

おかあさん。
あなたがいなかったら
わたしもいなかった。
2006-06-11-Sun-20:35

コントラバスは宇宙からできている

コントラバスは 宇宙からできている

共鳴胴は スプルースやメイプルなど森の木々から、
弓は 草原を走る馬の尾の毛から
成り立っていて、
弓に琥珀色の松脂を塗り 弦に滑らせることによって
音の矢が、ゆるやかに放たれる

コントラバスは 宇宙からできている

川のように流れる五線譜の 水面で乱反射する
ソプラノを支えるように、
水底を伝う バスの響きよ
ピチカートは 透明なおたまじゃくしとなって
弾けては 泳いでいく、生まれ故郷の宇宙へ・・・

宇宙が 秩序から無秩序へ 移ろわずにはいられないとしたら

創る、
という行為は
秩序に 環ることなのだろうか

かつては動植物だった 楽器は
今もなお 生命体として
自らを発した森羅万象に、産声を跳ね返し
ほとばしる旋律は
へ音記号以前、終止符以後のカオスを 結ぼうとする

 より深く

      ヨリ深ク

その環の中へ、根ざすために
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