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2011-06-11-Sat-11:03

えらぶんちゅ

大きなガジュマルの蔭で
そばかすの散った
ちいさな腕を
蝶のように広げて

千々にきらめく
言葉のさざ波に
貝殻の耳を澄ます
えらぶんちゅよ

黒い瞳は
星空がほろりと
零れそうなほど
深く

陽に焼けた
おかっぱの髪では
汗と潮の匂いが
蒸せている

唄うたう
 野の声も
唄になれなかった
 息も
唄にならなかった
 風も
お前の産毛を
選んで
さわさわと
撫でてゆくでしょう

ここは
沖永良部島

琉球でも
薩摩でも
ましてや
亜米利加でもなく

珊瑚礁の
ここにしか
咲かない
華々が
満ちあふれる島

どんな道を
選んでも
魂が
還ってゆくでしょう

白百合が
雑草のように
凛と繁る
土へ

エメラルドグリンの
光が透ける
遥かな
海へ

お前の足音が
この地を
遠く離れて
空を鳴らす日が
めぐりめぐっても

魂は
 日輪に
  羽ばたいて

お前が
生まれたのを
とこしえに祝う
ふるさとへ
還ってゆくでしょう


2011-05-23-Mon-21:57

水と炎

水になりたい

あなたがわたしに
剣を振りかざしても
微塵にされることなく
その切っ先を
静めるように濡らすような
霧雨になりたい

炎になりたい

あなたがわたしに
銃を放っても
血を流すことなく
その弾丸だけを
鷲づかみして燃やすような
燈火になりたい

剣だって
いてつく水から
銃だって
とろける炎から
生まれてきたんだよって
あなたは
世界をあきらめたように
笑うけれど

棘立ちそうな
あなたの背中に
二の腕を回して
無言で抱きしめるような
平和
そのものに
わたしはなりたい


2011-05-16-Mon-23:23

コマツナ

去年、コマツナを収穫してから放っていたプランターに、二月、いつの間にか雑草が生えて、三月、四月と、月を重ねるごとに、雑草は我が物顔で、どんどんプランターを埋めつくして、

「ここの土はお前のものじゃないよ」

雑草があまりにも暢気に、陽射しを欲しいままにしているので、ついつい爪はじきしたくなったけれど、意識とは裏腹に、人差し指に軽い稲妻のようなものが走る。

そういうわたしの体は
誰のものなのだろう。

体内を駆けめぐる風も、河も、くちびるの彼方へ唄となって消えて止まない。
わたしは河のほとりを耕して、むしゃむしゃ食べ尽くしてしまったコマツナをもう一度植えようとしたけれど、お腹の中にも青虫のようなくちびるがあるみたいだ。
コマツナを頬張った青虫は、さなぎ、蝶と、みるみる変貌を遂げて、天高く麟粉をまき散らして羽ばたいている。

今はもう五月。
蝶を目で追って、虹色の木蔭を仰いでいると、飲み込んだつもりになっていたものに、凌駕されていることに気づく。
地平線はくるりと、わたしもプランターの雑草も取り囲んで、同じ皿の上に盛り合わせている。

2011-05-04-Wed-23:21

水でできたラクダにのって

水でできたラクダにのって
燃える砂漠を さまよっていました
泉よりも澄んで
今にも碧空に溶けてしまいそうな
ヒトコブラクダに またがって
すり切れた地図にはない
大海原を求めて さすらっていました

ラクダの毛並を撫でると
懐かしい夜の汐の匂いが
手首に絡むように 蘇りました
溺れてもいいから
帰りたい場所が
かの海で 轟いていました

本当に捜しているものは
指先で慈しめるほどの距離で
潤んでいるかもしれないのに
なんで こんなにも 罪深く
駆り立てられていくのでしょう

水でできたラクダにのって
眩い砂丘を さまよっていました
羅針盤は狂おしく回って
幻のようなものが
この身を抱きしめて離しません

水でできたラクダにのって
焼ける砂丘を さまよっていました
この声も この眼差しも
目的地をまっすぐ指せないほど渇いて
足跡が・.・.と
熱砂に落とされては 煙に消されるたびに
きゃしゃな四肢は ますます透きとおっていって

水でできたラクダにのって
燃える砂漠を さまよってきました。

ラクダの
涼やかな眸が
固く閉じられた刹那
ターコイズブルーの空はもう
彼にしか見えないほど
大波をおこして

「これからはその足で
 ほんとうの心を
 さがしにいきなさい」 と

永らく歩ませた
かなしみが
ひとすじの風となって
わたしのくずおれた背中を
後押しします


2011-04-05-Tue-19:41

Fragile

まっさらな季節の入口で
産声を上げた人だから
Fragile
と、走り書きして
守りたくなるような
ガラスの影を
はらんでいました

魂は
鉛筆の先で
傷つけられるのを嫌うと
気づいた瞬間、
あなたは
突風にくだけて
遠のいてしまいました

季節には入口はあっても
出口はないのかもしれません

いくつも
トンネルをくぐって
影の欠片をさがしても
わたし自身が
迷路になってしまいそうです





(Seasons-plus-2011年春号 掲載作品)

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