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2010-10-31-Sun-00:06

秘する花

金蜜色の薫りが頬をかすめて
夕暮れの道をふり返りました

雑踏にまぎれて
途切れがちなソナチネ
沈黙がメトロノームを奏でています

呼びとめた声は霧雨よりも細く―――
ひょっとしたら空耳だったかもしれません

それでも一糸一糸
綾をなして紗となって
この身を華やかにくるんでいきます

 どこかできっと
 金木犀が立っている
 背を伸ばし
 うなじを匂わせて
 誰の目も
 届かないような
 静かな場所で
 どこかで高く高く
 金木犀が立ちつくしている
 焼きつけるように痛い
 冬と夏とを
 かたくなに忍んだ果てに
 生まれたての
 やわらかな
 流星雨を
 両腕いっぱいに
 光らせて

自動車の排気ガスが行き交う道に
ほつりほつりと
咲きはじめる乳白色の街灯り

同じ処で幾度もつまずいても
ピアノの音色は
空へ羽ばたく助走をやめません

この星の
一地点さえ
(そばにいる
 金木犀さえも)
瞳に映せないでいるわたしも
なゆたの隠れた星くずに
どれほど見守られているだろうと
肌身で感じながら

夜明けのような
夕闇に背を押されて
ふたたび歩きはじめます

 秘すれば花

 秘せずば
 花なるべからず ※

いつか聞いた
言の葉の蔭で
息づく薫りに
そっと
耳を澄ますように



 ※ 世阿弥「風姿花伝」
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