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2008-08-31-Sun-00:00

故郷が生まれる

「この町を出よう」

と、決めたときから
わたしの身体は透き通っていった

朝に夕に
素足をさらした畳に
横たわって
天井の木目を仰いでいる間に

幼いころ
かくれんぼした駐車場で
フェンスの錆びた匂いを
聴きつけた時に

夜更けに
今はもう永遠に閉まっている
タバコ屋の赤いポストへ
満月に向けて手紙を投函した刹那に

わたしの身体は
川面に浮かぶ泡沫のように
あふれる景色を
うっすらと透かして
河口まで流れてしまったことに気づく

いつかこの町から
わたしの姿が見えなくなっても
遠い空の下で
わたしが泣き濡れてしまわないように

予行練習
しているのかもしれない

駅前の青い桜の下で
手のひらをかざすと
セロファン状の皮膚の向こうで
木洩れ日がフラッシュする
この内をかけめぐる血管では
つかめない何か

高鳴る風に
溶けこむように
透き通っていくわたしの中心に
ととん……たたん……と
胎動を見る

(もうすぐ、列車が来る)

わたしの生まれた町が
すくっと二の足を立てて
羊水を蹴り上げる

かかと、波打って

町は
河口の先で
大きく輪廻して

(まもなく、出発する)

ドアの彼方の逆光へ
消え入ろうとする
わたしの中から
故郷が生まれる


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