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2008-01-06-Sun-20:36

あの頃の海

Re:海

葛西の海を歩く
砂浜には
貝や缶や
思い出の残骸が
散らばっている

「こんなの海じゃないよ」

かつて京葉線に乗ったとき
そう呟いた友達がいた
いわき出身の子だ
海だ!海だ!と
車窓に指を押し当てて
はしゃぐ私の側で
汚いし、狭いし、と
いわき弁で追い打ちをかけた

ああ、たしかに
いわきで生まれた友達にとっては
東京湾なんて海じゃないのかもしれない
友達にとって
海はふるさとだから
もっと潮の匂いがぷんぷんしてて
いつでも帰りたい場所だったのかもしれない

でも、
江戸川区で生まれた私にとっては
東京湾は立派な海だ
どんなに汚されたとしても
芯まで汚されることなく
その懐でしたたかに命を育み
はるか太古の昔から続いている

葛西の海を歩く
波打ち際には
誰かの足跡
私も点々と
残していく

「ね、海は海だよ
昔から
何処までも
繋がっているよ」

メールの返信をするように
海に思いを乗せたら
届けてくれるだろうか

あの頃の二人に



「立入禁止」

「立入禁止」
と書かれた看板にもたれて
潮風に吹かれた頃があった
学校をさぼって
制服のまま海に来た
でも本当に見たい海は
白い柵の向こうにあったから
ストライプの風景を指でつかんで
いつかここを越えたいと願った

「立入禁止」
と書かれた看板は
心の端にも立てられていたのだろう
だれかはそれを遠巻きに見て
ときには怒り泣いたりしたけど
荒波を抑えられないなら
(もしくは無理やり抑えようとするなら)
いっそ世界の端で寝かせて欲しかった

あの頃
自由と言われるものが
無性に欲しかったけど
あの頃
それが何なのか
ちっとも分からず
あの頃
心の中で叫んでは
ちょっと臭いと思って
あの頃
それは海のような
ものだろうと思った
あの頃
両腕をいっぱい広げても
もっと伸びる予感があったけど
あの頃
指先でうなる風を
ロックのように持て余して
あの頃
足元の深遠を
覗いてしまった気になって
あの頃
砂浜に飲まれそうになりながら
どこまでも逃げて
逃げて
逃げて

「立入禁止」

と書かれた看板は
今もなお潮風が吹きすさぶ先に
墓標のように立っている気がする

あの頃の自分が
荒波を抱え寝ていたら
どうやって手を差しのべよう



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