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2012-02-29-Wed-23:39

幾千万の結べない便りを

Dear ×××

今朝
わたしの町では
初雪が降りました。
あなたの街では
どうだったでしょうか?

粉雪が頭上から
囁きかけていたので
わたしは凍える頬をさらして
湯気のような声を立てようとしました。
そのとたん
口に含んでいた薄荷のドロップが
寒がりな真珠に思えてならなくて
くちびるを深海の貝のように閉ざしました。
うっかり噛まないように
大事に、大事に、温めていったら
すっ、と
しずかなかおりが
濡れた舌で透きとおっていきました。
あなたに伝えたくても伝えきれない言葉が
あかるいさみしさをもって
気化していきました。



「アメは噛んじゃだめ!」
って、あなたに叱られた頃が、懐かしい。
ねぇ、あの頃は何で
小さなことでも子どもみたいに
ポンポン感情をぶつけることが出来たんだろね。
わたしもせっかちだけど
あなたも相当せっかちで
イミテーションな果実が
口で溶けるのも待てないくらい
景色が目まぐるしく流れていったね。
そうだよ、あなただって叱っているそばから
ガリ……って
気まずい音を立てていた。
そんな些細なことも
聴き止めてしまうくらい
いつも呼吸を重ねていたんだね。
夏の陽射しきらめく
エメラルドの下り坂を
心が加速するままに駆けていた。



ねえ。
お互いが
それぞれの現実を
歩くようになってからも
あなたが背負っている
空の重みを たゆみなく思っている。
同じ天気の下で
笑い転げることが 叶わなくなっても
同じ大地の上で
ときわ木のような 声援を送っている。
あなたに語りかけるときは いつも
結ぶことができない便りのように
いつまでも
いつまでも
言葉を散りばめてしまって
いつのまにか
吹雪となってこの身をうずめてしまうけど
ゆきも、いつかはかろやかにとけるでしょう。
あなたも、
わたしも、
いつかは空そのものになってしまうでしょう。
だから、ねえ。
心でつむぐ便りが
あなたに結ばれないまま
つぎつぎ消えてしまっているようにみえても
大丈夫。
あなたも、
わたしも、
もとからたったひとりだった。
この世にひとりしかいない
わたしと、
一瞬を共にしてくれて
ほんとうにありがとう。



わたしは爪の先まで
子どもだったから
ドロップの缶には必ず
雪のような苦さを
戻していたけど

最後に残した孤独を
味わえるようになったら
あとはもう
どんな氷まじりの風からも
解き放たれるかもしれないと
まっ白になった道で
初めて思い当たりました

それにしても今夜は
芯から冷えますね
風邪ひいてませんか?
ちゃんと眠れてますか?
わたしは
真冬の底で
マリンスノーのような
静寂に打たれながら
小止みなく
心を
つむぎつづけています

幾千万の結べない便りを
たったひとりの
あなたに


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2012-02-29-Wed-23:25

あの夜がある場所

あの夜
時の透間に
椅子のようなものを
見つけて
ふたり 並んで腰かけて

目の前で
湖となって静まった闇に
それぞれ
眸を向けながら
ふたり 寄り添って

ほつり、ほつり と
君がまるくなった心を
くちびるから解き放つのを
私は掌のくぼみで
受け止めて

 心そのものに
 ただ、心そのものになって
 君を 聴き止めてしまったから

夜が明けて
時がその緞帳を
白々と閉めきって
あの椅子がある場所に
二度と戻れなくても

そもそも
ひとつの椅子で
共に座っていたのか
ふたつの椅子で
別々に分けられていたのか

それよりも
どうしてあの透間に
至ることができたのか
頭に靄がかかって
思い出せなくても

 心そのものに
 ただ、心そのものになって
 君と 波紋を起こしてしまったから

戻れないのは
あの夜
あの場所
じゃなくて
これまでの自分でしょう

私はこれから
君の無言の仕草にも
葦のようなアンテナを
震わせずにはいられないでしょう

都会の雑踏
直線的な谷間
鉛のような現実

君がスニーカーの紐を
きつく結び直し
灰色の道を
小突くように蹴って
私に冷たい背中を向けても

その裏で
言葉になるのを拒んでいる
無垢で純な
感情を
自分のもののように
感じずにはいられないから

 心そのものに
 ただ、心そのものになって
 君と 余韻を残してしまったから

君の肩越しに広がる
デコボコな青空も
満天を濡らす
光の雨のような
星くずを隠しています

あの夜の
流れ星が零れるほどの
一瞬、
君の心は
たしかに私の心でした


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