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2010-08-31-Tue-21:41

空の寿命

「空にも寿命がある」

と、あなたが呟いたとき、
わたしの手元で
シャーペンの芯が
線香花火の玉が落ちるように
ふつり、と折れました。

高校の演劇部の物置小屋の
日に焼けた窓の向こうで広がる空は
限界なんて知らないよ、って顔して
金色の羊雲をふたつ、みっつ浮かべています。

「それって、何かのセリフ?」

「いや。
 空にも寿命があって、
 シャボン玉みたいに
 ふくらんで、とんで、われて
 そして新しい空に生まれ変わるんだって」

「空も、いつかは亡くなるってこと?」

「かもな……」

そう呟いたあなたの喉仏が
詰襟の陰でかすかに波打って、
少し埃っぽい陽射しに照らされた輪郭は
今まで見たことないような雄々しさを感じる半面
今にも破裂して消えてしまいそうで、
わたしは胸の高鳴りを抑えるのに
必死でした。

ととっ……ととっ……
心臓もふくらんで、ちちんで、
またふくらんで、いつかは……


それにしても
あのとき書きかけた文字の先には
どんな言葉が胎動していたのだろう。

制服に縛られていたあの頃を
ふり返る歳になっても
まだ何かに囲われている。
会社、とか、社会、とか
そんなカテゴライズだけじゃなくて
もっと、何か、別の、

真夜中に
赤ちゃんが
突然泣き出したみたいに
枕元で携帯電話が震えて、
寝ぼけ眼で
あやすように着信ボタンを押す。

懐かしい市外局番から始まる番号の主に
あなたの早すぎた終わりを知らされる。

一瞬、
夢かと思い、
タオルケットからはみ出た足先まで
凍りつきそうになったけど、
まだ脈打っている。
唇に薄氷のように張りついた
酸素を吸引して
生々しく体温を保っている。

あの日のふたりを
まあるく包んで
明るい闇へと
みちびいていた空も、
いつか、どこかで、
生まれ変わるのだろうか。

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