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2007-09-27-Thu-23:19

月のみち

月が照らしてくれるなんて、嘘です。

月だって元々は
照らされている天体で
ビルが立ち並ぶ都会では
海よりも深い闇にかくれていて
この手はいつのまにか
ネオンに染まってしまいました。

目を暗ませるほど近く
ゆびさきを麻痺させる光に

乱舞する眩しさにかき消された
星くずの悲鳴さえ、すくえないまま

(でもね。月は、照らしてくれるよ)

私の中心で
苛立ちながらも
安らぐように
満ちる波を
見透かすように

逃げても

にげても

ニ、ゲ、テ、モ

捨ててきたはずの川の流れが
くるぶしに甦るから
ヘドロの溜まった横道に
逃げこむことはできません。

あの夜、
鉄橋のふもとで
影を重ねるように
交した約束も

電灯の下で
ぎんいろに煙った
すすき野原も
散りばめられた露も

時に流されて
手の届かない処まで
離されてしまったのに

うちよせる。

月のように。

銀河に
白いさざ波を立てる
月のみちのように――

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2007-07-08-Sun-00:12

七夕―天の川・地の河―

織姫がうらやましかった
  一年に一度しか
  愛しい人に逢えなかったとしても
  何千年ものあいだ
  星の数ほどの人に語りつがれ
  永遠に息づくふたりが

今宵も逢えなかった
  すりきれた日記を閉じて
  あなたがいない千日分をふりかえる
  硝子窓の外では
  夜露を含んだ河原が
  蛍のような燐光を放っている

     流れが変わればいい。
     あるいは
     溺れる覚悟で
     大河を越える勇気が。

天上に きらめいて
うたわれる恋と
地上で もがいて
一瞬でもうたえる恋
どちらが幸せなのだろう――

2007-06-09-Sat-19:25

海と声

 1

もう、
ふりかえらないのだ
髪をゆらしていった風は
束ねることはせず

つまさきは
後ろに広がる汀を
走れない世界にいて
こころだけがいつまでも
波になりたがっている



 2

ゆうべ、
海原を呼ぶ声が
半分失なわれてしまったので
貝殻のような名をつけて
せき止めとしたが
千切れてしまった風に
言の葉は乗せられない

下弦の舟にゆられ
水平線をたぐる旅にでるべきか
みぞおちの血汐を薬にするべきか
渚に立たされても
なぎさにはなれない



 3

うみ、と
ふたたびうたえたら
つながるのだろうか
海に、
それともながされてしまうのか

うみ、は
ちかづけばちかづくほど
風をいやまし
かけよるかかとを遠ざけようと
しずかに叫ぶのに
地球のうらから腕を伸ばして
蒼い乱気流で抱きしめようとする

うみ、と
ふたたびうたえたら
 (ふたたびはあるのか、
   灯台を巻き戻す
   ねじはあるのか、)



 4

ゆりかご、か
あしかせ、か

呼吸にとける旋律で
波は、くるぶしをなでていく

ゆりかご か、あしかせ か、

すぎてゆく、
すぎてゆく水の鼓動は、
足跡を包みこんでは
みなもとに触れるのをやさしく、拒む

喉元でうるむ
潮騒の遺伝子は
うみの底から続いているのだろう
それなのに、
波乱を孕みながら
 ふかく ふかく
  たどれば だとるほど
沈黙の果てに
飲みこまれていくのは、何故だろう



 5

体内時計の
中心に満ちる、月が
赤々と落ちてしまわないうちに

生まれる前の脈拍を、
五線譜に散りばめる

音符の一滴が
昇華されて
海鳥の声となるなら

声よ

波が静まった先に
謳いかける虚空はあるか


2007-05-09-Wed-21:16

マンゴウ

スーパーマーケットの入口で
マンゴウを手にした瞬間、
子宮が微かに痙攣したのを
見逃すことができなかった
雨の、せいかもしれない
外からは背すじを正すような
水しぶきが響いている

とおい五月に
こんな風に滝に打たれるように
マンゴウの日本画を観た
「百一才」
と、右下に記された絵は
女流画家の小倉遊亀さんが
その年でほんとうに描いたものだ

黒塗りのお盆に
赤や橙や萌黄色の
まあるいマンゴウが
七つほど重々しく転がっている
その姿は
どこかあっけらかんとしていて
それでいて生命力にみなぎっていて
百一才という年輪の上に
実らせた魂、
まっすぐな瞳で問いかけてくる

「一枚の葉っぱが手に入ったら、
宇宙全体手に入ります」*
入門した時からその言葉のままに
日本の風土の恵みを
絵の具にとかし、墨をすり、
細い筆で、画布に挑み続けた、
遊亀さん
どうしたら無心に描くことができますか
古木から萌えるみずみずしい緑が
大空を抱こうと伸びゆくように

まだ青い
卵のようなマンゴウは
ふるえる掌に
それでも確かなものを伝えて
黒髪からしたたる潤いを
芳醇なかおりに染めていく
買い物かごにひとつ、落としていこう
わたしもまだまだ
描きたい宇宙があるのだから



*******************************************************

小倉遊亀(おぐらゆき)1895-2000
四連目、*の言葉は、
小倉遊亀が入門した時に、師である安田靫彦氏が示した言葉です。

2007-04-07-Sat-22:28

ちはる

ちいさなきみが
ちいさな手をひらいて
ちいさな花の雨を
つかもうと
とびまわっているのを

「ちいさなしあわせ」

というひとことで
かたづけたくないのです


 この永い
 桜みちの果てに
 ふたりは出会った

 はるかな空の
 一点で
 出会えた


ちいさなきみの
ちいさな目には
スピカの海が
うつっている

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