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このごろ、悪質な書きこみが多いので、コメントは管理人が認証してから表示される設定に変更しました。
せっかく書きこんでいただいても、すぐには表示されないので、不安にさせてしまうかもしれませんが(^−^;
問題ないコメントだったら、すぐにOKを出すように心がけるので、お気軽に足跡つけていってくださいね。
お待ちしてます。(^−^)/
(というか、返信も早めにですね^^;がんばります)
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Moon Child
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みぎめは
ひだりめを
見たことないまま
自転車のように
視線をすべらせようとします
ひだりみみは
みぎみみに
触れたことないまま
底無しの
らせん階段を造ろうとします
わたしは
メヴィウスの環の中で
永遠にわたしに
めぐり会えないから
新月の晩に
身を切るように
わたしの片割れを産みました
わたしが、光で
あなたが、影で
喃語から物語を
ふくらませるように
あなたは
地球を踏みしめたばかりの
柔らかなかかとで
宇宙から流れる風を
耕していきます
ころがして間もない
半熟のことばが
小石につまずくと
あなたは
癇癪を起こして
わたしの腕の中で
むずかります
でも
半欠けの種も
うねりにうねって
やがては迷路をはらんだ
森になります
草木は
雷雨のような
種を降らせては
いのちが秘める可能性に
驚きを隠せません
ねえ、いつか
満月の口に
わたしが飲みこまれて
暗闇に惑ってしまったら
今度はあなたが
わたしを産みおとしてくれますか?
時々
泣きじゃくっては
あなたを
困らせるかもかもしれないけど
あなたを
千夜一夜の言の葉で
包めるくらい
もっと
もっと
奥深いヒトに
なれたらいいのに
あなたが、光で
わたしが、影で
月は
照らされていないと
満ち欠けることもできません
ひだりめを
見たことないまま
自転車のように
視線をすべらせようとします
ひだりみみは
みぎみみに
触れたことないまま
底無しの
らせん階段を造ろうとします
わたしは
メヴィウスの環の中で
永遠にわたしに
めぐり会えないから
新月の晩に
身を切るように
わたしの片割れを産みました
わたしが、光で
あなたが、影で
喃語から物語を
ふくらませるように
あなたは
地球を踏みしめたばかりの
柔らかなかかとで
宇宙から流れる風を
耕していきます
ころがして間もない
半熟のことばが
小石につまずくと
あなたは
癇癪を起こして
わたしの腕の中で
むずかります
でも
半欠けの種も
うねりにうねって
やがては迷路をはらんだ
森になります
草木は
雷雨のような
種を降らせては
いのちが秘める可能性に
驚きを隠せません
ねえ、いつか
満月の口に
わたしが飲みこまれて
暗闇に惑ってしまったら
今度はあなたが
わたしを産みおとしてくれますか?
時々
泣きじゃくっては
あなたを
困らせるかもかもしれないけど
あなたを
千夜一夜の言の葉で
包めるくらい
もっと
もっと
奥深いヒトに
なれたらいいのに
あなたが、光で
わたしが、影で
月は
照らされていないと
満ち欠けることもできません
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えらぶんちゅ
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大きなガジュマルの蔭で
そばかすの散った
ちいさな腕を
蝶のように広げて
千々にきらめく
言葉のさざ波に
貝殻の耳を澄ます
えらぶんちゅよ
黒い瞳は
星空がほろりと
零れそうなほど
深く
陽に焼けた
おかっぱの髪では
汗と潮の匂いが
蒸せている
唄うたう
野の声も
唄になれなかった
息も
唄にならなかった
風も
お前の産毛を
選んで
さわさわと
撫でてゆくでしょう
ここは
沖永良部島
琉球でも
薩摩でも
ましてや
亜米利加でもなく
珊瑚礁の
ここにしか
咲かない
華々が
満ちあふれる島
どんな道を
選んでも
魂が
還ってゆくでしょう
白百合が
雑草のように
凛と繁る
土へ
エメラルドグリンの
光が透ける
遥かな
海へ
お前の足音が
この地を
遠く離れて
空を鳴らす日が
めぐりめぐっても
魂は
日輪に
羽ばたいて
お前が
生まれたのを
とこしえに祝う
ふるさとへ
還ってゆくでしょう
そばかすの散った
ちいさな腕を
蝶のように広げて
千々にきらめく
言葉のさざ波に
貝殻の耳を澄ます
えらぶんちゅよ
黒い瞳は
星空がほろりと
零れそうなほど
深く
陽に焼けた
おかっぱの髪では
汗と潮の匂いが
蒸せている
唄うたう
野の声も
唄になれなかった
息も
唄にならなかった
風も
お前の産毛を
選んで
さわさわと
撫でてゆくでしょう
ここは
沖永良部島
琉球でも
薩摩でも
ましてや
亜米利加でもなく
珊瑚礁の
ここにしか
咲かない
華々が
満ちあふれる島
どんな道を
選んでも
魂が
還ってゆくでしょう
白百合が
雑草のように
凛と繁る
土へ
エメラルドグリンの
光が透ける
遥かな
海へ
お前の足音が
この地を
遠く離れて
空を鳴らす日が
めぐりめぐっても
魂は
日輪に
羽ばたいて
お前が
生まれたのを
とこしえに祝う
ふるさとへ
還ってゆくでしょう
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水と炎
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水になりたい
あなたがわたしに
剣を振りかざしても
微塵にされることなく
その切っ先を
静めるように濡らすような
霧雨になりたい
炎になりたい
あなたがわたしに
銃を放っても
血を流すことなく
その弾丸だけを
鷲づかみして燃やすような
燈火になりたい
剣だって
いてつく水から
銃だって
とろける炎から
生まれてきたんだよって
あなたは
世界をあきらめたように
笑うけれど
棘立ちそうな
あなたの背中に
二の腕を回して
無言で抱きしめるような
平和
そのものに
わたしはなりたい
あなたがわたしに
剣を振りかざしても
微塵にされることなく
その切っ先を
静めるように濡らすような
霧雨になりたい
炎になりたい
あなたがわたしに
銃を放っても
血を流すことなく
その弾丸だけを
鷲づかみして燃やすような
燈火になりたい
剣だって
いてつく水から
銃だって
とろける炎から
生まれてきたんだよって
あなたは
世界をあきらめたように
笑うけれど
棘立ちそうな
あなたの背中に
二の腕を回して
無言で抱きしめるような
平和
そのものに
わたしはなりたい
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コマツナ
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去年、コマツナを収穫してから放っていたプランターに、二月、いつの間にか雑草が生えて、三月、四月と、月を重ねるごとに、雑草は我が物顔で、どんどんプランターを埋めつくして、
「ここの土はお前のものじゃないよ」
雑草があまりにも暢気に、陽射しを欲しいままにしているので、ついつい爪はじきしたくなったけれど、意識とは裏腹に、人差し指に軽い稲妻のようなものが走る。
そういうわたしの体は
誰のものなのだろう。
体内を駆けめぐる風も、河も、くちびるの彼方へ唄となって消えて止まない。
わたしは河のほとりを耕して、むしゃむしゃ食べ尽くしてしまったコマツナをもう一度植えようとしたけれど、お腹の中にも青虫のようなくちびるがあるみたいだ。
コマツナを頬張った青虫は、さなぎ、蝶と、みるみる変貌を遂げて、天高く麟粉をまき散らして羽ばたいている。
今はもう五月。
蝶を目で追って、虹色の木蔭を仰いでいると、飲み込んだつもりになっていたものに、凌駕されていることに気づく。
地平線はくるりと、わたしもプランターの雑草も取り囲んで、同じ皿の上に盛り合わせている。
「ここの土はお前のものじゃないよ」
雑草があまりにも暢気に、陽射しを欲しいままにしているので、ついつい爪はじきしたくなったけれど、意識とは裏腹に、人差し指に軽い稲妻のようなものが走る。
そういうわたしの体は
誰のものなのだろう。
体内を駆けめぐる風も、河も、くちびるの彼方へ唄となって消えて止まない。
わたしは河のほとりを耕して、むしゃむしゃ食べ尽くしてしまったコマツナをもう一度植えようとしたけれど、お腹の中にも青虫のようなくちびるがあるみたいだ。
コマツナを頬張った青虫は、さなぎ、蝶と、みるみる変貌を遂げて、天高く麟粉をまき散らして羽ばたいている。
今はもう五月。
蝶を目で追って、虹色の木蔭を仰いでいると、飲み込んだつもりになっていたものに、凌駕されていることに気づく。
地平線はくるりと、わたしもプランターの雑草も取り囲んで、同じ皿の上に盛り合わせている。
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水でできたラクダにのって
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水でできたラクダにのって
燃える砂漠を さまよっていました
泉よりも澄んで
今にも碧空に溶けてしまいそうな
ヒトコブラクダに またがって
すり切れた地図にはない
大海原を求めて さすらっていました
ラクダの毛並を撫でると
懐かしい夜の汐の匂いが
手首に絡むように 蘇りました
溺れてもいいから
帰りたい場所が
かの海で 轟いていました
本当に捜しているものは
指先で慈しめるほどの距離で
潤んでいるかもしれないのに
なんで こんなにも 罪深く
駆り立てられていくのでしょう
水でできたラクダにのって
眩い砂丘を さまよっていました
羅針盤は狂おしく回って
幻のようなものが
この身を抱きしめて離しません
水でできたラクダにのって
焼ける砂丘を さまよっていました
この声も この眼差しも
目的地をまっすぐ指せないほど渇いて
足跡が・.・.と
熱砂に落とされては 煙に消されるたびに
きゃしゃな四肢は ますます透きとおっていって
水でできたラクダにのって
燃える砂漠を さまよってきました。
ラクダの
涼やかな眸が
固く閉じられた刹那
ターコイズブルーの空はもう
彼にしか見えないほど
大波をおこして
「これからはその足で
ほんとうの心を
さがしにいきなさい」 と
永らく歩ませた
かなしみが
ひとすじの風となって
彼のくずおれた背中を
後押しします
燃える砂漠を さまよっていました
泉よりも澄んで
今にも碧空に溶けてしまいそうな
ヒトコブラクダに またがって
すり切れた地図にはない
大海原を求めて さすらっていました
ラクダの毛並を撫でると
懐かしい夜の汐の匂いが
手首に絡むように 蘇りました
溺れてもいいから
帰りたい場所が
かの海で 轟いていました
本当に捜しているものは
指先で慈しめるほどの距離で
潤んでいるかもしれないのに
なんで こんなにも 罪深く
駆り立てられていくのでしょう
水でできたラクダにのって
眩い砂丘を さまよっていました
羅針盤は狂おしく回って
幻のようなものが
この身を抱きしめて離しません
水でできたラクダにのって
焼ける砂丘を さまよっていました
この声も この眼差しも
目的地をまっすぐ指せないほど渇いて
足跡が・.・.と
熱砂に落とされては 煙に消されるたびに
きゃしゃな四肢は ますます透きとおっていって
水でできたラクダにのって
燃える砂漠を さまよってきました。
ラクダの
涼やかな眸が
固く閉じられた刹那
ターコイズブルーの空はもう
彼にしか見えないほど
大波をおこして
「これからはその足で
ほんとうの心を
さがしにいきなさい」 と
永らく歩ませた
かなしみが
ひとすじの風となって
彼のくずおれた背中を
後押しします
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春、一歩手前で、
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踏切の向こうできっと
ゆれているのは、春だ。
列車は懐かしい人の影を乗せて
目の前をかすってゆく。
左隣では赤い光が
内出血を起こしそうなほど
こんこんと高鳴っている。
今は独り
凍える指に息を吹きかけて
温めることしかできないけれど、
いつかきっと
彼岸の陽炎と手をつないで
あの日だまりへ
さらにその先へ
踏切の向こうできっと
もえているのは、春だ。
寒さの余り
頭から爪先まで
どくどくと脈打つ川は
やわらかく白熱する終点を
求めずにはいられない。
どんな思い出も
この身をすり抜けていったけれど、
土埃の混じる風に踊っては
いつかは
足元に芽生える草となる。
踏切の向こうできっと
ないているのは、春だ。
目頭に
生まれて
初めて溶けた
風花のなごりが
記憶の果てに
流されてしまっても
涙によく似た
透明な種子を
芯に秘めて
今、ここに、
生かされている。
ゆれているのは、春だ。
列車は懐かしい人の影を乗せて
目の前をかすってゆく。
左隣では赤い光が
内出血を起こしそうなほど
こんこんと高鳴っている。
今は独り
凍える指に息を吹きかけて
温めることしかできないけれど、
いつかきっと
彼岸の陽炎と手をつないで
あの日だまりへ
さらにその先へ
踏切の向こうできっと
もえているのは、春だ。
寒さの余り
頭から爪先まで
どくどくと脈打つ川は
やわらかく白熱する終点を
求めずにはいられない。
どんな思い出も
この身をすり抜けていったけれど、
土埃の混じる風に踊っては
いつかは
足元に芽生える草となる。
踏切の向こうできっと
ないているのは、春だ。
目頭に
生まれて
初めて溶けた
風花のなごりが
記憶の果てに
流されてしまっても
涙によく似た
透明な種子を
芯に秘めて
今、ここに、
生かされている。
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ティーポットの中で
■■■
ティーポットの中で
泣き叫んでも
無駄だよ
透明な壁の奥で
縮こまって
飲み込まれていくのを
選んだのは
他ならぬ
わたし
だから
じんわり熱い
琥珀色の湯船に
肩までつかって
歪んだ硝子越しの
冬空をにらんでいました
外に出るの
いやだな
雪 降りそうだし
産毛で気泡を立てて
染み入るような
渋味も
グラニュー糖で
ごまかせたらいい
巨人の
ささくれた指が
取っ手を
持ち上げるときだけ
溺れそうになるけど
ここはここで
楽なんだ
それでも
雪が吹きすさぶうちに
うずくまっているだけじゃ
ポットはどんどん冷えていくことを知りました
巨人が
寒さを紛らわせるために
ポットを注いで、注いで、
やがて飲み干されてしまったら
薄氷で閉ざされたような空間に
たった独り 残されることも見えてきました
(今からでも、
遅くないだろうか)
心の底から
声がきこえる
取り乱しそうな
涙腺をよそに
しん と
さえわたる
湧水のような
(もう一度、
生きなおすことは
できるだろうか)
重い蓋を
ぐっと押し上げ
幻が沈殿した
ぬるま湯から
力をこめて這い上がって
この手は、この腕は、
わたしだけを抱きしめるために
とうとうと脈打っているんじゃない
ほんとうは
こんな凍えそうな夜こそ
温かなジンジャーティーを
この指で
一杯
二杯‥‥と
淹れて
だれかの孤独を
湯気で
そっと
慈しめるような
人になりたい
泣き叫んでも
無駄だよ
透明な壁の奥で
縮こまって
飲み込まれていくのを
選んだのは
他ならぬ
わたし
だから
じんわり熱い
琥珀色の湯船に
肩までつかって
歪んだ硝子越しの
冬空をにらんでいました
外に出るの
いやだな
雪 降りそうだし
産毛で気泡を立てて
染み入るような
渋味も
グラニュー糖で
ごまかせたらいい
巨人の
ささくれた指が
取っ手を
持ち上げるときだけ
溺れそうになるけど
ここはここで
楽なんだ
それでも
雪が吹きすさぶうちに
うずくまっているだけじゃ
ポットはどんどん冷えていくことを知りました
巨人が
寒さを紛らわせるために
ポットを注いで、注いで、
やがて飲み干されてしまったら
薄氷で閉ざされたような空間に
たった独り 残されることも見えてきました
(今からでも、
遅くないだろうか)
心の底から
声がきこえる
取り乱しそうな
涙腺をよそに
しん と
さえわたる
湧水のような
(もう一度、
生きなおすことは
できるだろうか)
重い蓋を
ぐっと押し上げ
幻が沈殿した
ぬるま湯から
力をこめて這い上がって
この手は、この腕は、
わたしだけを抱きしめるために
とうとうと脈打っているんじゃない
ほんとうは
こんな凍えそうな夜こそ
温かなジンジャーティーを
この指で
一杯
二杯‥‥と
淹れて
だれかの孤独を
湯気で
そっと
慈しめるような
人になりたい
■■■
秘する花
■■■
金蜜色の薫りが頬をかすめて
夕暮れの道をふり返りました
雑踏にまぎれて
途切れがちなソナチネ
沈黙がメトロノームを奏でています
呼びとめた声は霧雨よりも細く―――
ひょっとしたら空耳だったかもしれません
それでも一糸一糸
綾をなして紗となって
この身を華やかにくるんでいきます
どこかできっと
金木犀が立っている
背を伸ばし
うなじを匂わせて
誰の目も
届かないような
静かな場所で
どこかで高く高く
金木犀が立ちつくしている
焼きつけるように痛い
冬と夏とを
かたくなに忍んだ果てに
生まれたての
やわらかな
流星雨を
両腕いっぱいに
光らせて
自動車の排気ガスが行き交う道に
ほつりほつりと
咲きはじめる乳白色の街灯り
同じ処で幾度もつまずいても
ピアノの音色は
空へ羽ばたく助走をやめません
この星の
一地点さえ
(そばにいる
金木犀さえも)
瞳に映せないでいるわたしも
なゆたの隠れた星くずに
どれほど見守られているだろうと
肌身で感じながら
夜明けのような
夕闇に背を押されて
ふたたび歩きはじめます
秘すれば花
秘せずば
花なるべからず ※
いつか聞いた
言の葉の蔭で
息づく薫りに
そっと
耳を澄ますように
※ 世阿弥「風姿花伝」
夕暮れの道をふり返りました
雑踏にまぎれて
途切れがちなソナチネ
沈黙がメトロノームを奏でています
呼びとめた声は霧雨よりも細く―――
ひょっとしたら空耳だったかもしれません
それでも一糸一糸
綾をなして紗となって
この身を華やかにくるんでいきます
どこかできっと
金木犀が立っている
背を伸ばし
うなじを匂わせて
誰の目も
届かないような
静かな場所で
どこかで高く高く
金木犀が立ちつくしている
焼きつけるように痛い
冬と夏とを
かたくなに忍んだ果てに
生まれたての
やわらかな
流星雨を
両腕いっぱいに
光らせて
自動車の排気ガスが行き交う道に
ほつりほつりと
咲きはじめる乳白色の街灯り
同じ処で幾度もつまずいても
ピアノの音色は
空へ羽ばたく助走をやめません
この星の
一地点さえ
(そばにいる
金木犀さえも)
瞳に映せないでいるわたしも
なゆたの隠れた星くずに
どれほど見守られているだろうと
肌身で感じながら
夜明けのような
夕闇に背を押されて
ふたたび歩きはじめます
秘すれば花
秘せずば
花なるべからず ※
いつか聞いた
言の葉の蔭で
息づく薫りに
そっと
耳を澄ますように
※ 世阿弥「風姿花伝」
■■■
わたしに帰る
■■■
梨の木々が
満月のように
ふくいくと香る夜を
肩に流しながら
自転車をすべらせていると
地球のまるみが
遠くまで
視えるようです
土に転がった梨が
やがて
凛と
実るように
満月も
ひとめぐりすれば
ふたたび
円かに輝くように
わたしもいつかは
わたしに帰るのでしょうか
あの日
星を実らせようとして
手が痛むほど
荒れ野を耕したのも
決して無駄ではありませんでした
一昨年よりも
去年よりも
いっそう豊かな秘密をはらんで
秋が
舞い戻ってきます
知らないうちに
こぼれ落ちていた種を
鈴生りにするために
帰って
いきます
みんな
みんな
わたしに
帰っていきます
まるく繋がった時を
駆けぬけていけば
背中を押していた風に
めぐり会えます
不毛な地に
涙を植えつくして
しゃがみこんでいた
わたしも
なつかしい未来に
帰っていきます
満月のように
ふくいくと香る夜を
肩に流しながら
自転車をすべらせていると
地球のまるみが
遠くまで
視えるようです
土に転がった梨が
やがて
凛と
実るように
満月も
ひとめぐりすれば
ふたたび
円かに輝くように
わたしもいつかは
わたしに帰るのでしょうか
あの日
星を実らせようとして
手が痛むほど
荒れ野を耕したのも
決して無駄ではありませんでした
一昨年よりも
去年よりも
いっそう豊かな秘密をはらんで
秋が
舞い戻ってきます
知らないうちに
こぼれ落ちていた種を
鈴生りにするために
帰って
いきます
みんな
みんな
わたしに
帰っていきます
まるく繋がった時を
駆けぬけていけば
背中を押していた風に
めぐり会えます
不毛な地に
涙を植えつくして
しゃがみこんでいた
わたしも
なつかしい未来に
帰っていきます
うた・たね